(今日の記事はかなり長めです。)
6月8日の現代ビジネスに掲載されたこの記事。
「働かないアリ」から働きすぎの日本人が学べること
~目先の効率追求が組織全体を破壊する長谷川英祐(はせがわ・えいすけ)進化生物学者
北海道大学大学院農学研究院准教授。→全文はこちらを(PDFファイル)
この記事の内容を、自分なりに要約してみました。
「二八の法則」と呼ばれる法則(経験則)があります。それは、
会社の中で利益を出す働きをしている人は2割(残り8割中6割がカツカツ、最後の2割は遊んでいる)。
しかし、利益を出している2割の精鋭だけのグループを作ったら、なんとその中の2割の人しかしっかり働かない。
というもの。(より詳しくは「パレートの法則」を参照)
確かに実際の会社で見るに、もともと高学歴の集まりでも、秀でて有能な人は2割ぐらいという感じはします。
集団で活動するとき、なぜそのようなことが起こるのか?
長谷川氏は、1)アリの観察、2)コンピューター・シミュレーション(数値実験)によって検証しました。
まず、1)実際のアリを観察した結果、
- しっかり働いているアリは一部で、ほどほどのアリ、いつも働いていないアリもいる。
- しっかり働いているアリだけのグループを作ったら、働き者・怠け者の比率は元の集団と同じだった。
- 怠け者のアリだけのグループを作ったら、働くアリが出現した。
→すなわち「二八の法則」は本当だった!
という結果になりました。
(尻に火が付かないと動かない輩はどこの世界にもいるんですね、)
進化論的に観ると、いつも皆が働いているアリの集団の方が生産性が高いので、長い年月を経てそのような集団だけが生き残ってくるはず。
しかし実際のアリの集団には怠け者が居る。
なぜ怠け者のアリが必ずいるのか?
そこで、2)長谷川氏はコンピューターを使ってシミュレーションしました。
まずシミュレーションで与えた条件は2つ。
- 疲労が溜まったら働けなくなる
- 閾値(仕事をしないといけないというプレッシャーが高まると働き出すプレッシャーレベル。レベルは個体によって様々)
結果は、全てのアリが働き者の集団の方が沢山の仕事をした(集団として生き残る可能性が高かった)。
だから1と2の条件だけなら、この世のアリは全て働き者になっているはず。
しかし現実には怠け者がいるのだから、他のアリが一生懸命働いてるのを横目に怠けている者がいるようなアリの集団の方が、集団として生き残るのに有利な状況があるはず。
実際のアリには、それがあるのです。
それは卵の世話。
働きアリがいつも卵をなめて、唾液に含まれる物質で卵の腐敗を防がないと、卵が全滅してしまうそうです。
だから皆が働き者だったら、疲れが溜まってみんなが一斉に休んだ途端に卵が全滅してしまう。
それで、
3.もし全員が同時に働けなくなったら、巣が全滅する。
という条件を入れてシミュレーションしたら、「様々な条件の中では、いつも誰かが怠けている集団だけが生き残る場合がある」という結果がでたそうです。
(シミュレーションでは、餌が豊富な場合や、沢山仕事をしないと餌が確保できない場合、寒くて活動が鈍くなっている場合とか、様々な条件を模した実験をしているのだと思います。当然、条件がよければ怠け者がいなくても絶滅しない場合がある)
すなわち、
怠け者は、皆が疲れたときに集団を絶滅から救うために出現する救世主(MRY)
ということになります。
面白いですね。
長くなりますが、よろしかったら続きをどうぞ。
話は変わって、田んぼでお世話になっているS翁が「昔は米を作って食えとった。(←昔は生活できていたが、今は出来なくなった)」と言われます。
近年、お米の買い取り価格が安くなってきたそうですが、特に一昨年2014年はすごく安くなり、米作りを続けられないほどだったそうです。
参考)「米農家の僕が語る。米価が低すぎるんだが、オレはもう限界かもしれない。」
買い取り価格がここまで下がると、経費を引いたらほとんど赤字ライン。
それで、今年2016年、私の田んぼの周りは自給用米以外は飼料用稲(米ではありません。牛に食べさせる草としての稲です)を栽培する農家がほとんどになりました。
飼料用稲を栽培すると補助金が出るので、食べる米を作るより利益が出るそうです。
果たしてこれでいいのだろうか?海外からたくさんの食料を輸入している日本。
せめて生きるために本当に必要な主食の米だけは・・・。
米の作付けが減ると、これまで使ってきた大規模なお米の乾燥設備とか、インフラの維持にも問題が出てくるのでは?
米の価格もそうだし、太陽光発電、建築関係、その他、様々なことが政治的に決められ、普通に安心して暮らすための基盤が揺らいでいる感じがします。
そして政治が市民のコントロールに使っているのは、多くの場合「お金」、そして「情報」。
何が起こるか分からない世の中で、政治の言うことを聞かず、「お金」にならない農業を続け、金を稼がず税金も納めない怠け者たち。
果たして救世主になる時代が到来するか?